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今回の目的は隅田川あたりで江戸前のハゼを釣ること。

そしてもう一つのミッションは大切な釣り仲間に会う。

その2つのためだけに東京へ向かった。

「初めての深夜バス」

名古屋を出発したのは6月も末、金曜日の午後11時55分。

普段なら疲れがたまりにくい新幹線での移動だが、実は夜行バスというものに乗ったことがない。

今回は単独での移動。妻も娘もいない。学生気分で東京駅行きのバスを予約したのだ。

自宅から最寄り駅まで歩き、地下鉄でバス停がある駅まで向かう。普段は利用しない駅で、しかも夜の12時前に降りることなどほとんどない。なんとなくゴミ臭く、時折黄色い声が響く構内を抜け、バス停へと向かう。

乗客らしき影が数人見えた。彼らの旅の目的を一人想像しながらバスを待つ。15分遅れで到着したバスに乗った。満席だ。車内は思ったよりも狭い。

でもそんなことはどうだっていい。憧れの夜行バスだ。車窓からの夜景をゆったり眺めながら、これから東京へ向かう。しかも釣りができる。こんな窮屈な旅もファーストクラスのように感じられる。最高の金曜日だ。

ところが私の夢はもろくも崩れ去った。

なんと車内の窓という窓がカーテンで仕切られてしまったのだ。

なんてことだ、、まぁ、普通の人間なら寝る時間だ。それ以外にすることなどない、ということだろう。でもちょっと待ってくれ、夜景を楽しみたい客もいるはずだが、、

それならそれで、良い。深夜のサービスエリアを楽しむこともできる。そのためなら薄暗い車内にも耐えられるだろう。

、、、が、悪夢再び。

出発して30分ほどで最初のサービスエリアに到着した。まだこの先300km以上ある。旅は焦らず。ぼちぼち楽しんでいこうと思い、トイレ休憩だけ済ませバスへ戻る。次の休憩ではミル挽きコーヒーの自販機で、美味しい目覚ましコーヒーを飲むんだ。ワクワクしながら仮眠を取る。

1時間ほどで目が覚める。するとちょうど次のサービスエリアに入る感覚が、バスの傾きと遠心力で伝わってきた。名古屋から2時間ほど。静岡市の手前あたりまでは来ただろうか?富士川サービスエリアか?深夜の興奮が収まらない。

バスが停車した。

今か今かと待ちわびて、靴も履き直した。なかなか扉が開かない。まずは運転手さんが記録簿でも付けるのだろう。運行記録は大切だ。

しかし扉は開かないし、周りを見渡しても誰も降車しようとしない。もしかしてここはドライバーの仮眠場なのか?仕方がないから私も寝ることにする。

次こそは、、と期待しつつも目が覚めたら首都高速道路を走っていた。

東京だ。

「5時55分・東京駅」

定刻通り、東京駅に到着。

さあ、ここからどうしようか?と悩んでる暇はない。ミッションが目白押しなのだ。

妻へのお土産獲得は外せないし、行きたいお店もたくさんある。グーグルマップにはピンが無数に立っている。

まずは新宿へと向かう。

地下鉄乗り場はどこだろう?あ、東京はメトロか。丸ノ内線乗り場を探すが分からない。とりあえず駅の構内に入ればなんとかなるだろう。そう思いマナカを取り出す。さあ、地下鉄はどこだ?さまよいながら、ようやく丸ノ内線乗り場を見つけた。

改札を通ろうとすると、おかしい、はじかれる。例のごとく恥ずかしいパターンに遭遇しながらも、駅員さんに尋ねてみる。

するとどうだろう。実は一度JRの改札を通っていたらしく、丸の内線に乗る前に精算してくださいとのこと。そのまま乗り換えはできないのか、、。無駄にJRの料金を収めることになった。が、まあ良い。とにかく新宿に向かうんだ。

東京は怖いところだ。

ガラガラの地下鉄に乗り込み新宿へ向かう。東京の地下鉄車内は幅が広い。名古屋のと比べてとても広々だ。しかも空いている。気分は上々である。

でも油断はできない。降車のタイミングを逃してはならないのだ。車内掲示板を、田舎者とバレないよう恥ずかしくない程度にチラ見しつつ、平静を装いながら東京モノ面をする。

「Paddlers Coffee」

そして新宿に到着。

そこから京王線に乗り換え、幡ヶ谷駅へ。

第一の目的はパドラーズコーヒーだ。

スタンプタウンコーヒーのコーヒーを楽しめる店として有名で、知ってる方も多いだろう。東京に来たら必ず立ち寄ることにしている、お気に入りのコーヒーショップだ。

幡ヶ谷駅から地上へ出ると、なんとも言えない、休日の朝の香りがする。爽やかな人々のウォーキング姿もあれば、二日酔いだろうか?いまにも落下しそうなタバコをくわえて酩酊している人の姿も目に入る。

朝のスタートは人それぞれだ。私もはるばる名古屋からやってきて、今ここ、東京・幡ヶ谷にいる。それにしてもだいぶ暑いな。厚手のジーンズが湿気で重くなってきた。

店についた。

いつものフレンチプレスで淹れてもらうコーヒーとホットドッグ。朝早いせいか、奥のテーブル席が今日は珍しく空いている。腰掛け、リュックを椅子に置く。

隣にいた女性が、リュックから顔を出している釣り竿を見て、釣りですか?と声をかけてくれた。いい朝だ。

おいしいコーヒーとホットドッグをかきこんで、次の目的地を目指す。

そう、今回の旅は忙しいのだ。

「新宿巨大迷路」

来た道をもどり、再び新宿へ向かう。

次は妻のお土産を調達しなければならない。もちろん失敗は許されない。

新宿についた。

お目当ては名古屋じゃ買えないお菓子。バターバトラーというらしい。おそらくブームは去っているはずだが、名古屋ではなかなか手に入らないらしい。そうなのか、それで満足してくれるなら安いものだ。

店を探す。

新宿駅構内駅ナカのニューマンという場所にあるらしいが、ここでも迷いながら、さまよいながら、ようやく手にすることができた。タスクは早めに完了させておくに越したことは無い。思ったよりも大きな袋を手にする事となったが、まあいいだろう。

「アオダイショウ」

約束の11時まではまだ時間がある。

少し手前の浅草橋駅で降り、そこから歩いて集合場所へ向かうことにする。ここからスカイツリーまではけっこう距離があるが、途中のんびり休憩しながら歩いていこう。知らない街を歩くのは楽しい。なぜか蔵前でピアゴを発見。しかも24時間営業だった。

とはいえ暑い、とにかく汗が止まらない。14ozのジーンズを履いてきたのが失敗だったか、、

予定よりルートをショートカット、もっと蔵前散策を楽しみたかったが、なにしろ暑い、、なにやらゲストハウスらしき建物があったので、近づいてみるとカフェも併設されている。Nui. HOSTEL & BAR LOUNGEという店の様だ。逃げ込むように入店するも、さすがにコーヒーを頼む気に離れずアイスレモネードを頂くことにする。生き返った。

しばらく店内でゆっくりする、ゲストハウスらしく外国から遊びに来てる方が多いようだ。どおりで椅子の高さが日本人向けじゃないわけだ。つま先しか床につかない。

さて、それはさておき。

目的地までを改めてマップで検索する。するとすぐ近くに隅田川が流れているではないか。せっかくだから川沿いを歩くことにする。いくらかは涼しいことを願って。

きれいに整備された歩道に出た。これが隅田川か。

いままで京葉線で渡ったことしかないが、間近でみると改めて東京に来たという気がする。が、暑い。やはり淡い期待は裏切られた、灼熱の遊歩道。

人もほとんど歩いておらず、特に気になったのはこの看板のみ。おそらくアオダイショウか。噛み付くことは稀だと思うので、そこまで気にすることはないだろう。むしろ東京でアオダイショウに出会えるなんて、嬉しいとすら思ってしまうのは田舎出身故か。古い友人に出会ったような気がした。

なお、アオダイショウについては妻のほうが詳しいのだが、その話はまたの機会にとっておく。

それから橋を渡り、待ち合わせのコーヒースタンドまでてくてく歩く。ひたすら日陰を見つけながら、早歩きだ。

スカイツリーがだんだん近付いてくる。やはり名古屋のTV塔よりも遥かに大きい。高所恐怖症の私が登ることは一生ないと思う、いや、絶対に登らない。

「UNLIMITED COFFEE BARで待ち合わせ」

UNLIMITED COFFEE BARにやってきた。

店内はほぼ満席だ。運良く奥のカウンターに案内してもらえたが、なぜだろう、やはり足が届かない。みんなそんなに足が長いのか?

東京はすごい所だ。

ここでは爽やかな炭酸系ドリンク、トニックコーヒーをオーダーすることに。

感じの良いお姉さんが、目の前で何やら説明を加えながら、手際よく作ってくれる。水出しコーヒーを保管してるステンレスボトルがカッコいい、なんというメーカーの物だろう?

あ、最後に隠し味も入れてくれた。うまくないはずがない。schweppesのトニックウォーターは、大人味で最高である。

着信があった。彼は少しだけ遅れるらしい。

その理由が家事とのこと。最高だ。やはり思った通りの人物だと、確信した。家事を手伝う旦那さんに悪い人はいないというし、釣りが好きな人に悪い人はいないって言ってたよね、お父さん、という歌詞もあるくらいだから、つまりそういう事なのだろう。

もうしばらく、この後の釣りを想像しながらコーヒーをストローで吸う。だんだんとレモンの果実がストローに詰まり始めてきた。

そうこうしていると、彼らしき人物が店内へ入ってきた。分かりやすい魚柄のTシャツを着ている。間違いないだろう。

そう、彼と会うのは初めてなのだ。SNSのアイコンでしか顔は知らない。が、おそらくそうだ。

一番奥の席にいる私の方へ、彼は寄ってきた、間違いない。はじめましての挨拶をすませ、しばらく話をする。もちろん自然と内容は釣りの事になるのだが、初めて会話するとは思えないくらい、しゃべることができた、と思っている。

私はもともと内向的というか、話すという事が苦手で、円滑なコミュニケーションというモノが大の苦手なのだ。それでもやはり共通言語が多ければそれは解消される。
この場合、もちろん「釣り」である。

釣りは「釣り」自体がコミュニケーション手段である。

九州だろうが関西だろうが、関東だろうが、もちろん海外であっても、釣り人同士なら一緒に釣りをすれば、あるいは釣りの話題だけで仲良くなることができる。

内向的な人には釣りはおすすめだ。私も釣りに何度救われたことか。

さらに彼は関西出身という事で、話すことが得意ときた。こんな口下手な私相手でも次々と話題を振ってくれる、一番ありがたいパターンだった。

お互いの基本情報はある程度分かっていたので、話題はこの後の釣りに移る。

当初はスカイツリー前の小さな川で釣る予定だったが、時期的にまだ早く、まだ隅田川の方がハゼが釣れる可能性は高そうだ、とのこと。釣りの情報は地元の人に聞くのが一番だ、これは全国共通の認識で良いと思う。釣りは情報戦でもあるのだ。

というわけで、行き先は隅田川に決まった。

「そういえば、おなかすいてません?」

そうだ、今日は冷たいものばかり飲んでいたから空腹だ、固形物がほとんど体に入ってない。とりあえず、ランチを求めて店を出る。外はまだまだ暑かった。

隅田川までは1km弱か。東京の人ならタクシーを使う距離なのだろうが、つい、いつもの癖で徒歩で道連れにしてしまった、悪かったかなぁ。

道中も釣りの話は続く。やはり気になるのは釣具についてだ。彼はパックロッドという、細かく分割して持ち運べる竿を持参していた。これなら都会の電車移動もラクラクだろう。憧れるスタイルだ。ついでにリールもかっこいいのを使っていた。10年以上型落ちしてるものだがフラッグシップモデルで、私も以前使っていたので親近感を感じた。腐っても鯛である。

「モンブラン吾妻橋店」

ランチはハンバーグ。彼おすすめの店「モンブラン」に着いた。なかなか渋い店構えだ。

「ここは有名人もよく訪れるハンバーグ屋さんなんですよ」

彼は言った。店構えからして納得できる。手書きの黒板メニューも雰囲気がありすぎた。さっそく店内に入ると、休みだというのに暑さからだろうか?お客さんはまばらだ。あ、よくよく会話を思い返したらこの店じゃなくて、浅草店の事だった。つまりほどほどに空いていて、穴場的、というのだ。

肉のいいにおいがする。中央あたりの2名掛けテーブルに座る。男2人にとっては少々テーブルが小さいが、それもまた良い。使い古されたメニューから各々選び、料理が届くのを待つ。

肉汁溢れんばかりのハンバーグが到着した。男二人でまずは撮影タイムだ。彼は釣り用の防水コンパクトカメラを使っている、しかも、それも私が以前使っていたモデルと同じ。やはり釣り人必携はタフネス防水カメラだ。

撮影もそこそこに、がっつり食べる。もちろんライス付きだ。トッピングのパスタを食べるのか?中年男にとっては悩ましいところだが、今日の歩数を考えれば大丈夫だろう。ごちそうさまでした。最後に店の外観を撮影して隅田川へ向かう。いよいよだ。

隅田川へひたすら西進する。午後1時過ぎ。そろそろ暑さのピークだ。小さな水路で大規模な工事が行われており、工事後、日が暮れたら川底から巻き上げられた魚のエサ達を求めて肉食魚が集まってくるんだろうなと想像しながら、隅田川を目指す。

「隅田川・ハゼ釣りに興じる」

ついにやってきた。ここが隅田川である。

あとはやることは決まっている。釣りだ。今回の対象魚はハゼ。江戸前のハゼだ。てんぷらがうまいだろうな。ただし、ハゼのシーズンにはまだ早すぎる。もしかしたら釣果ゼロもあるかもしれない。とにかく仕掛けの準備をする。

最初のポイントは日陰も適度にあって、釣りやすい。二人ともバッグから道具を取り出す。人の釣り道具にはやはり興味がある。ファッション雑誌でバッグの中身大公開が好きな人は多いだろう、それと同じだ。

彼はジップロックに必要最低限の道具を携えていた。しかも使い古されたジップロックだ。偶然にも私もジップロックを使っていた。できるだけ道具はシンプルに。その精神がまさかのシンクロ。やはり思った通りの方だった。

そこから彼はハゼ釣りに使うオモリと針を取り出し、手際よくセッティングしていく。私も竿に糸を結び、ウキを付け、針を結ぶ。私はどうしてもウキ釣りでハゼを釣りたかった。江戸前のハゼが、エサに食いついてウキを引っ張る、それを確認した私が竿を引っ張り、釣りあげるその一連の動作でハゼを釣り上げたかった。東京で。

エサは青イソメ。

これが釣りのハードルを上げる原因にもなってるのかもしれない、例の、あの、気持ち悪くて触りたくないミミズのようなアレである。見た目といい、動きといい、触り心地といい、確かに気持ち悪いという気持ちは分かる、が、良く釣れるのだ。あの動きとにおい、そして食感(食べたことないので分からないが、、)が魚を刺激するらしい。

おそらく初めての釣りで青イソメを使ったという人も多いのではないだろうか?ついでに女性を釣りに誘って、代わりにエサを針につけてあげれば好感度アップは間違いないはずだ(違ってたらごめんなさい)。

そんな青イソメを渋谷の上州屋で仕入れ、バッグに忍ばせここまで持ってきてくれたのは彼だ。ありがたい。まさか電車の隣人も、自分のすぐ近くにあの青イソメが潜んでいるなんて夢にも思わなかっただろう。その様子を冷静に思い浮かべると、笑えてくる。

さて、釣り開始だ。彼は青イソメの付いた仕掛けを力を抜いたキャストで隅田川へ放る。私も負けじとエサを付け、仕掛けを川へ落とす。

ウキが水面に浮かぶ様子は、何度見ても飽きない。魚がかかるとそのウキが水中へ引き込まれるので、その瞬間を今か今かと待ち構えるのだ。

釣りをする人は気が長い、とよく思われがちだ。でも逆の方が多いのではないか?私に限っていえば、釣りの時だけは気が短い。魚の反応が無いと仕掛けを変えたり、狙うポイントを変えたり、仕掛けの流し方を変えたり、エサを変えたり。ついには場所移動をしたりもする。

そう、とにかく魚がかかるまでは、あの手この手を使って狙い方を変えるのだ。ただ、その様子は周りから見てもあまり分からないと思う。基本的に無言で、そして呼吸するかのように、速やかに作業を繰り返すのでパッと見わかりづらいのである。

たぶん彼もそうしているだろう。いや、している。釣りをやってる人なら彼の、その小さな変化に気づくのだ。彼は始めのうちは岸から近いところに仕掛けを投げていたが、しだいに遠くへ投げたり、少し竿をあおってエサに動きを与えたり。またルアー釣りのように少しずつ岸辺向かって、魚を誘うようにエサを引っ張ってきたりと。とにかく状況に応じてテクニックを繰り出している。

ただ、周りからは東京のこんなところで釣りをしているモノ好きにしか見えないだろう。当の本人たちはいたって真面目にやっている。周りの目は気にしない。

「魚信」

魚信だ。

釣り用語になるが、魚からの信号、つまり魚が針にかかったことを意味する言葉だ。
先にヒットしたのは彼の方。プルプル手に伝わってくる感触を楽しんでいるようだ。

ほどなく、魚が岸辺まで寄ってくると、空中に何かが舞った。

極小だ。

小さすぎる魚がかかると、水から魚を引き上げるときに勢い余って魚が宙を舞ったように見える、下手をすると自分のはるか後方まで飛んで行ってしまうことがある。まさにそのサイズだ。

私は嬉しくなり、彼のもとに駆け寄る。

「セイゴですね」

彼は苦笑いしながらも、少し安堵した表情で教えてくれた。セイゴというのはスズキの若魚、つまり子供のこと。ムニエルとか、洗いとかで有名なあのスズキだ。釣り人の間ではシーバスとも呼ばれ、東京湾ではもちろん、全国各地にファンを持つ人気ターゲットになっている。

いくら子供といえど、スズキはスズキ。きれいで尖ったヒレ、鋭いエラ、そして何より顔の半分くらいを占めるであろう大きな口。まさに釣り人憧れの魚だ。

そんな極小スズキが自分の体の3分の1はあろうかというエサを丸のみにする。人間に例えると、大人のウナギを丸のみするくらい、といえば伝わるだろうか?釣りはエキサイティングだ。

それから魚が弱らないうちに記念撮影をすませ、川へ戻す。キャッチ&リリース。

本命の魚ではなかったが、東京まできて魚の顔が拝めなかった、なんて自体は回避できた、ありがたい、私も自分が釣ったかのように嬉しかった。

それからやる気を出して狙うが釣れない。二人とも釣れない。

時間だけが過ぎていき、新幹線の時間が迫ってきた。

もう駄目だ、、、。

暑さもあって、気力が尽きた。久々に短時間だが高濃度で、集中した釣りをした。文字通り身体も頭もクタクタである。

彼もあれからノーヒット。残念ながらここまでだ。

「ライフスタイルに釣りをプラスする」

そこから愛知の家に帰るまでの記憶がない。というのは大げさだが、本当に疲れ果てて、よく名古屋で新幹線を降り損ねなかったものだと、今ごろになってゾッとしている。ちなみに予定通りの三河安城駅通過の車内放送で目が覚めた。彼からはお疲れ様メールが届いていたが、返信も遅くなってしまい申し訳なかったと思っている。

今回は狙ったハゼは釣れなかったが、1つ言い訳をするとしたら、季節が早すぎた。こればかりはどうしようもない。だがこういった失敗も次の釣りに向けた反省材料として、活かすことができる。いや、このような理由付けを無理やりにでもして、次また釣りに行くための口実にしているのかもしれない。次こそは、次こそは、と。

それに釣りの楽しみは釣りだけではない。

今回は深夜の高速バスに始まりお気に入りのコーヒーショップ巡り、街の散策、人との出会い、そしてちょっとだけ釣り、という行程だったがどれが欠けても最後の充実感は得られなかっただろう。

普段のライフスタイルに釣りをプラスする。

そんな人がこれから増えていくことを期待したい。

釣りは楽しい。

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