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【愛知県わんださんからの寄稿です】

 

 

魚釣りと一言に言っても、釣る対象になる魚はほぼ無限大。

地球上には、現在30,000種類の魚類が存在しているらしいけど、

その中のたった1種類、マゴチと向き合った一か月。

 

ある日の釣り道具屋さんで

ご覧のようなPOPを目にした。

マゴチ

どうやら、今年はマゴチという魚が知多半島でよく釣れているらしい。

マゴチはサイズも50センチ以上に成長して引きも強く、食べても美味しい。

漁獲高は少ないからスーパーには出回らず、料亭等に出荷されるのが主流のようで、釣りたてのマゴチを食べられるのは釣り人の特権とも言われている。

「良く釣れてるなら自分も狙ってみようかな」

軽い気持ちでマゴチ釣行を計画した。

 

Day1

釣具屋さんでも評判の釣りポイントにやってきた。

マゴチ

朝5時台に起きて、目的地へ。

公園とボートマリーナが併設されていて、朝日も相まって清々しいロケーション。

石垣のような足場。

さすが評判の場所だけあって、朝早くから駐車場はほぼ満車。

釣り人も多くて、隣の人との間隔を気にしながらルアーを投げる。

たいていの魚は、地形の変化や障害物に身を潜めて獲物を待っているはずなので、急に水深が深くなっているところや、橋げたの影なんかを意図的にルアーを通してみる。。。

が、なーんにも手ごたえはない。

「こんなところにいるはずなのに・・・」

1時間、2時間、、、と時間が過ぎる。

これだけ評判の場所で、絶好の朝イチの時間に来てるのに、何がダメなんだろう?

重いルアーを使っていて、それを遠くに投げて巻きとる繰り返しなので、腕がパンパンになってくる。日差しも強くなってきて、汗がじわっと湧いてくる。

疲れた。今回はダメだな。

良く釣れている、とはいえ、1回でなんでも釣れるほど釣りは甘くないことも分かっているので、またここに来て今度こそ、と思って後片付けをした。

 

~Day1 累計釣り時間:6時間

 

Day2

金曜日の午後、会社を早く上がれることになった。空いた時間の使い道は決まっていた。

マゴチに、リベンジしよう。

何の反応すらなかった1日目が、正直悔しかった。なぜ釣れている人が居て評判になっているのに、自分には釣れなかったのか?

釣具屋が大々的に勧めているルアーも買った。これで道具の差もほとんど無い。

あれから、マゴチの生態や特徴もいろいろ調べた。

基本的には底でじっとしてて、獲物が来るのをじっと待ってる。だから、マゴチがいるピンポイントの場所にちゃんとルアーを通してあげること、それも海底にぴったりフォローするように気を遣ってあげること。

さらに、少しでもマゴチにエンカウントするチャンスを増やすように、ひたすら投げ続けること。。。

海底をつついてる小魚のイメージで、集中してルアーをアクションさせる。

さぁ、もうこれは、マゴチさん、食うしかないっしょ!
長期戦になった。

この日は午後からの釣り、快晴、暑い。

のどがカラカラになってへたってくる。

夕日がきれいだった。(よく見ると電車も走っています)

この日も、何の反応も無かった。

「こんなところにいるはずなのに・・・」

 

~Day2 累計釣り時間:11時間

 

Day3

なぜ釣れなかったのか。さらに考える。

ルアーは釣れた実績のあるものを使ったから、道具は言い訳にならない。動かし方も王道をいっているはず。時間帯も、釣れやすい時間である朝イチと夕暮れ、どちらもたっぷりやっている。

ただ、もしそこにマゴチが居なかったとしたら・・・

実績のある場所だけに、非常に苦しい言い訳にも聞こえるけど、相手は生き物。次々と住み家を変えていることだってあるはず!

釣れない時間が長く辛いが、”釣れるまで諦めない”、という気持ちもより強くなってきていた。はたから見てたらしょーもないことかもしれないけど、ここまでムキになる自分はやっぱり結構釣り(そして、未だ会えないマゴチ)が好きなんだと思う。

自分なりに情報収集して、これまでとは別の港に向かう。

時間も妥協せず、夜が明ける5時前に到着。

ちょっと、釣り人居すぎじゃないですか?

電車も走っていない4時台で、この人口密度の場所が他にあるのか。。。

心が折れそうになるのをこらえて、狭いスペースに声をかけて入れてもらう。

 

周りでは、この小さいサバがバンバン釣れている。この人だかりも、実はサバ狙いだったのだ。

私も、このサバを釣る。
でも、それは手段であって、目的ではない。

何を言っているかというと、このサバを生餌にして、愛しのマゴチを狙うのである。

先にも触れた通り、マゴチは小魚を食べる。簡単に手に入る小魚があるのであれば、マゴチへの一番の近道はそれをエサにしてしまうこと。(泳がせ釣り、という釣り方の一つ)

サバは無限に釣れるので、活きのいいやつにハリをかけて海へ戻す。

サバの群れを追って、マゴチもきっと近くまで来てるはず!

自分の中でも自信が有った。

 

が、サバがマゴチに変わることは無かった。

「こんなところにいるはずなのに・・・」

 

~Day3 累計釣り時間:17時間

頑張ってもらったサバたちは、唐揚げにしておいしく頂きました。

 

Day4

気持ちは負けていなかった。

とっておきの秘策を思いついていた。

沖堤、という選択。

沖堤とは、沖にある堤防のことで、陸続きになっておらず、船で渡らなければ行くことができないところ。普通の堤防と比べて、より外海に面することになるので、一般的には魚の種類も絶対数も多い釣り場所。

なんとなく、直感で釣れる可能性が高いと感じた。

船は朝4時出発。家から発着場まで片道1時間。

もう早起きなのかどうかも分からなくなってくるド深夜の2時半に家を出て、車を走らせた。いわゆる”釣りバカ”になっている状態。

その釣りバカも世の中にはたくさんいて、沖堤への船は結構な客が入っていた。これを読んでいるみなさんが熟睡している時間帯に、魚のことでそわそわしてる人たちが居るんです。

4時15分。沖堤到着。
やっぱり海の朝日はなかなか良い。
大きな堤防なので人もまばらで、これまでのマゴチ釣行の中で一番気持ちの良い始まりだった。

明るくなるころを目掛けて準備をして、肩慣らしの一投目。
これまでずっとイメージしているとおり、底ぴったりにルアーが通ることを意識して、ゆっくりリールを巻く。

巻き始めてから10秒後くらい、
ついにその時がきた。

コン、と何かに弾かれたような感触が、数十メートル先の海底から、細い糸を通じて伝わってきて、そこから竿がグンと重くなった。

 

え、一投目から!?

 

無意識にリールを巻いて魚を手繰り寄せる間に、だんだん考える余裕が出てくる。

引きは重い。今かかってるのはマゴチなのか?それとも別の何かか・・?

水面近くまで上がってきたときに、これまで悶々とイメージしていた、でも実態は見えなかったシルエットが浮かんできた。

やっと、釣れた。。。

長い時間をかけて狙ってきた魚を手にして、嬉しい気持ちはもちろん、なにより達成感があった。

言葉にするのは難しいけど、これだけ一生懸命を重ねて出した結果。釣りをやっていて良かった、としみじみ感じる。

「釣りって、釣れない時間が暇じゃない?」

 

釣りをやらない人からよく言われることだけど、釣れない時間こそ、頭と体をフルに働かせて、なぜ?を繰り返してるので、暇になんてそうならない(たまにくじけることはあるけど・・・)。

それに、そこまで熱くならなくとも、今回の写真のようなきれいな景色や、水辺の生き物ともじっくり向き合えるので、自然や動物が好きな人であれば、素敵な休暇のリフレッシュにもなると思う。

以上、久々にガチ目な釣りの楽しみ方ができたので書き留めてみたが、もし魚釣りの魅力が少しでも伝わったなら、嬉しいです。

マゴチは刺身で。自分で釣った魚の味は特別なものに。
単に美味しい魚を食べたい、という人も、釣り好きになるポテンシャル、十分有りです。